特別受益の計算方法(持戻計算)

特別受益者がある場合、各相続人の具体的相続分は、下記のステップで計算していきます。

ステップ① 相続が開始した時点の存在する遺産の総額を算出する

ステップ② 特別受益となっている既に行われた贈与や遺贈の額を算出する

ステップ③ ①と②を合計(みなし相続財産)する

ステップ④ ③(みなし相続財産)に各相続人の法定相続分を乗じる

ステップ⑤ 特別受益者については、相続分から自己の特別受益額をマイナスした額が相続額となる。特別受益者以外の相続人については、の金額が相続額となる。

具体的な計算例

特別受益者がある場合の具体的な計算について考えてみましょう。

具体例 その1

被相続人 父
法定相続人 長男、二男
相続開始日の遺産額 8,000万円
長男への特別受益額 4,000万円(住宅購入資金として)

ステップ① 8,000万円(相続開始時の遺産合計額)

ステップ② 4,000万円(長男への特別受益額)

ステップ③ ①+②=1億2,000万円(みなし相続財産)

ステップ④ ③✕1/2(法定相続分)=6,000万円(各相続人の相続分)

ステップ⑤ 長男(特別受益者):6,000万円-4,000万円(特別受益額)=2,000万円

二男:6,000万円

この例では、相続開始時に残った遺産8,000万円を、長男2,000万円、二男6,000万円相続することになります。

 

具体例 その2

被相続人 父
相続人 長男、二男
相続開始日の遺産額 2,000万円
長男への特別受益額 4,000万円(住宅購入資金として)

ステップ① 2,000万円(相続開始時の遺産合計額)

ステップ② 4,000万円(長男への特別受益額)

ステップ③ ①+②=6,000万円(みなし相続財産)

ステップ④ ③✕1/2(法定相続分)=3,000万円(各相続人の相続分)

ステップ⑤ 長男:3,000万円-4000万円(特別受益額)=-1,000万円⇒0円

二男:2,000万円

このケースでは、相続階時点の遺産総額2,000万円のうち長男が取得できる金額は0円、二男が相続開始時遺産の全額2,000万円を全額取得します。また、このケースで二男はみなし相続財産の法定相続分である3,000万円のうち2,000万円しか実際には相続できていませんが、自己の遺留分(遺留分は本来の相続分の2分の1)が侵害されていない限り、二男は長男に1,000万円を請求することはできません。

 持戻しの免除

特別受益者がある場合に具体的相続分を算出するための持戻し計算は、あくまで相続人間の公平を尊重するための規定です。

一方で、被相続人には、自己の財産の相続について自分の意思で決定したいという、自己決定権があり、これを尊重すべきという観点もあります。
たとえば、複数ある子のうち、特定の子に財産をより多く分け与えたいといったときに、過去行われた贈与を加えずに実際に相続開始時に残った財産だけを遺産分割の対象として欲しいということもあるはずです。

そこで、民法では、被相続人が遺言書等により持戻し免除の意思表示をすることができると規定しています。

なお、平成30年の民法の改正によって、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が配偶者に対して居住用不動産である土地または建物を贈与したり遺贈したりした場合には、あえて遺言などで持戻し免除の意思表示をしなくとも、持戻し免除の意思表示があったものと推定するという規定が設けられました(民法903条4項)。

第903条 共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、第900条から第902条までの規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。
2 遺贈又は贈与の価額が、相続分の価額に等しく、又はこれを超えるときは、受遺者又は受贈者は、その相続分を受けることができない。
3 被相続人が前二項の規定と異なった意思を表示したときは、その意思に従う。
4 婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第一項の規定を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。
出典:e-Gov 民法

特別受益と時効の関係

特別受益に時効はありません。ですから、被相続人の生前行われた相続人に対する贈与は何年前に行われた贈与であっても特別受益として持戻し計算の対象となります。

そのため、相続人間の遺産分割協議によって相続分を決定する場合には、相続開始の何十年前に行われた贈与であってもその額を持戻して、みなし相続財産を算出し、各相続人の具体的相続分の計算をすることになります。

一方、遺留分の計算の際には、原則として相続開始前10年の間になされた生前贈与しか持戻しの対象になりません。遺留分を計算するにあたりあまり古い贈与を持ち出されると、その贈与の時点では遺留分を侵害していなかったにも関わらず、その後の期間の経過により遺留分を侵害してしまうような贈与になってしまう場合もあるため、あまり長期間にわたって持戻しを認めると法的安定を害することもあるからです。

なお、被相続人が亡くなる10年以上前に行われた贈与であっても、相続の開始(被相続人の死亡)が令和元年71日より前であれば、特別受益となる可能性があります。

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