負担付贈与

住宅ローン残債のある不動産の生前贈与の方法について、実際に当事務所に寄せられた事例を参考にご紹介します。

住宅ローン残債がある不動産を生前贈与する方法

基本情報

相談者 父:64歳 長男:35歳

土地建物の名義 父単独所有

土地建物の購入時期 約20年前

ローン残債務額 約1,500万円

不動産の時価 約1,400万円

その他 息子夫婦との同居を機に自宅をリフォームしたい(リフォーム費用として500万円の融資利用を希望)

 相談者様の考えた方法

まず、相談者様が考えたのは、不動産の名義変更などは行わず、父が新たに500万円のリフォーム費用の融資を受け、自宅のリフォームを行い息子夫婦と同居するということでした。

しかし、複数の金融機関に相談したところ、いずれも融資は承認されなかったそうです。

通常、金融機関から融資不承認の理由は明らかにされませんが(金融機関は「総合的に判断して」とだけ答えます)、おそらく、父のご年齢や今後の収入、残債と合わせた返済額などの関係と思われます。

他の司法書士に提案された方法

次に、他の司法書士に相談し提案されたのが、土地建物をお子さんに売却し、お子さんがその購入資金とリフォーム資金を含めた額のローンを組むという方法です。

確かに、こちらのお客様のケースでは、お子さんは所得や年齢の点でも問題なく、実際にその家に同居をするということでしたから、住宅ローンを利用する点では特に問題がないように思われます。

しかし、実際には、このケースで銀行から融資を受けるのは難しいです。

それは、融資をする金融機関にとって「親子間の売買」という点が大きな障壁になるらしく、いくつかの金融機関を回ってはみたものの、どこも門前払いに近いような状態だったとのことです(審査を受けることもできず、「そのような親子間売買のご資金のご融資は承っていない」と言われてしまったそうです。)。

おそらく、親子間という特殊な関係性から、適正な形での売買が行われているか判然としないといったことや、通常他人間の売買であれば仲介業者などがしっかりとした物件の調査をして間違いがない取引がなされることにより、融資の担保評価としても一定の評価を受けることができますが、親子間の売買ではこういった点もグレーになりがち、ということがあるのかもしれません。さらに、売買代金として融資した金銭が実際には売買代金以外に流用されてしまうといった不正が行われることに対する懸念もあるようです。

 当事務所の提案した方法

当事務所では、「負担付贈与」という方法を提案させて頂きました。

負担付贈与とは、贈与にあたり、受贈者に一定の負担をさせることを条件とした贈与のことです。

このケースでは、お父様の既存のローンの残債の返済をお子さんが引き受ける代わりに、お父様から不動産を贈与してもらい、お子さんはその返済原資とリフォーム費用として1,900万円のローンを組むといった方法により負担付贈与を行いました。

登記の手続については、不動産の贈与による所有権移転登記、新規の住宅ローンの抵当権設定登記、既存の住宅ローンの抵当権抹消登記を行いました。

ただし、この方法を用いる場合、一番の心配は贈与税の問題になろうかと思います。

 一般に、負担付贈与の場合には、贈与財産(今回のケースでは不動産の時価)からマイナスの財産(今回のケースでは、住宅ローンの残債務)を差し引いた額に贈与税が課せられます。

つまり、ローンなどの負担はほとんどないにもかかわらず、高額な不動産を贈与してしまうと、その差額に相当する部分には、多額の贈与税が課せられてしまうおそれがあるのです。

負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。
個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に贈与税が課税されることになります。

国税庁HP

幸い、今回のケースは、この不動産時価と残債務の額のバランスもある程度取れていて、事前にお客様に税務署に御相談に伺ってもらったところ、贈与税の心配はない旨の回答を頂けました。

取得後ある程度の年数が経過し、住宅ローンの返済も年数なりに進んでいれば、丁度両者のバランスが取れている形になっているケースは多いと思います。また、融資を相談する場合、金融機関としても、親子間売買などの方法に比べ、融資の審査を通し易いようで、スムーズに借り換えを行うことができました。

当事務所では、借換先の金融機関のご紹介や、金融機関との手続面での交渉なども承ります。

負担付贈与を利用した住宅ローンの借り換えをご検討の方、当事務所までご相談ください。