相続人の中に認知症等によって十分な判断能力を有しない方がいる場合、その方には遺産の分割についても自由意思によって判断をすることが難しい訳ですから、一般的な相続のように、その方を含めた共同相続人全員の話し合い(=遺産分割協議)によって遺産を相続することはできないということになります。

このような場合、判断能力の十分ではない相続人のために、成年後見人を立て、この成年後見人が本人を代理して遺産分割協議を成立させるというのが、法律の予定する遺産分割協議の進め方になります。

成年後見制度を利用して遺産分割協議を進める

このケースで成年後見人の選任を申し立てる場合、申立ての時点において、今後遺産分割協議の必要性(予定)があることを家庭裁判所には知らせることになるのですが、家庭裁判所からは、これから行おうとする遺産分割協議書の案を提出するよう求められます。

これは、そもそも成年後見制度自体が判断能力の不十分な方(本人)の利益の保護を目的とする制度であることからすれば当然のことです。もし、こうした点に家庭裁判所が関与しないのであれば、成年後見制度を悪用し、事実上本人の相続権を不当に奪ってしまうような遺産分割協議がなされることが起こりうるからです。

そして、成年後見人が遺産分割協議に参加することになる場合には、原則として、本人の法定相続分以上の財産を確保した内容でなければ、遺産分割協議の合意を認めない取り扱いとなっています。もちろん、法定相続分相当の遺産を相続することが確保されていることを確認するため、家庭裁判所には、被相続人の財産目録や不動産の評価額を証明する書類、預貯金の通帳の写しや残高証明書などの資料を提出しなければなりません。

こうして成年被後見人に十分な財産が確保されることが確認されれば、判断能力の不十分な相続人のために成年後見人が選任され、予め家庭裁判所によって認められた内容の遺産分割協議書に、選任された成年後見人が本人に代わって署名押印をすることになります。

成年後見制度を利用する場合の注意点

成年後見制度を利用して遺産分割をする場合には、以下の点に注意が必要です。

1.本人にとって不利益な遺産分割はできない

繰り返しになりますが、成年後見制度は、あくまでも判断能力の十分でない方(本人)の利益を保護するための制度です。相続人にとって都合良く、相続手続をし易くするための制度ではありません。
ですから、本人以外の相続人が得をして、本人が損をするような遺産分割協議をすることはできません。

この点を勘違いなさっているご家族が少なからずおられるようですが、「成年後見人を立てれば、あとは自由に遺産を分けることができる」ということではありませんので、ご注意ください。

2.本人と成年後見人の利益相反

成年後見人として本人のご親族が選任された場合、その成年後見人が相続人の1人でもあるときは、遺産分割協議をすることは、本人と成年後見人の利益とが対立するとみられることになります。

もちろん、本人の不利益のないように遺産分割をしようとしている場合が多いでしょうが、そうした思いに関係なく、外形上、客観的にそのような関係にある方というだけで、利益が相反する関係とみられてしまいます。

このような状態を法律的には「利益相反」といいます。

そして、本人と成年後見人とは利益相反の関係にある場合、その成年後見人は本人の代わって遺産分割協議を進めることはできません。

本人と成年後見人との間で利益相反がある場合、成年後見人に代わり、後見監督人や特別代理人という第三者が本人の代理人として遺産分割協議に参加することになります。

3.成年後見人を辞めることはできない

現行(令和8年現在)の成年後見制度では、いったん成年後見人に選任された方は、遺産分割協議が成立して相続手続が無事完了したとしても、正当な事由があり、家庭裁判所の許可を得たときを除き、成年後見人を辞任することはできません。

(後見人の辞任)
第844条 後見人は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。
引用元:e-Gov 民法

つまり、いったん成年後見人として選任されると、本人がお亡くなりになるか、本人の意思能力が回復しない限り、成年後見人としての役割が継続することになってしまうのです。

成年後見人に選任された場合には、本人の財産管理や身上監護義務はもちろん、家庭裁判所への定期報告などの義務も生じ、これらの義務がずっと続くことになりますから、このような点も認識しておくべきです。

4.成年後見人等への報酬が発生する

遺産分割のために成年後見制度を利用する場合、ご親族が成年後見人に選任されたのであれば無償ということが多いでしょうが、ご親族を成年後見人の候補者として成年後見制度の利用を申立てたときでも、家庭裁判所が候補者である親族を成年後見人とせず、司法書士や弁護士などの専門家を成年後見人として選任することがあります。

また、親族が成年後見人となった場合でも、そのお目付け役的に成年後見監督人や利益相反となる場合の特別代理人が選任されることもあります。

このようにして、成年後見人、成年後見監督人、特別代理人として、専門家が選任された場合には、本人の財産の額や業務の内容等に応じ、毎月数万円程度の報酬が発生することになります。

なお、これら専門家への報酬は、基本的には本人の財産の中から支弁することになります。

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