生前贈与

生前贈与とは

贈与とは、自己(贈与者)の財産を無償で相手方(受贈者)に与えることを約し、受贈者がこれを承諾することによって成立する契約です。

生前贈与」とは、文字どおり贈与者が生前に行う贈与のことです。

一般に、生前贈与は、親族間などにおいて相続税の対策や遺産分割等の生前対策を目的として行われています。

ただし、生前贈与を行うと、年間110万円を超える部分には原則として贈与税が課税されます。また、贈与税の税率は相続税等よりも高いことから、相続税など他の税制との比較や特例の利用なども含め十分な対策や検討を行うことが必要です。

生前贈与のメリット・デメリット

生前贈与のメリット

1.相続財産を減らすことができる

暦年課税によって生前贈与を行うことにより、1年間の贈与の額が110万円を超えない限りは贈与税が課税されません。

この方法による場合、100万円の生前贈与を3人の家族に10年に分散して贈与すれば、総額3,000万円の資産を相続税の課税対象となる財産から減らすことが可能となります。

2.自分意思で行い、見届けることができる

遺言で贈与(遺贈)をする場合や死因贈与といって贈与者の死亡により効力を生ずる贈与をする場合、ご自分でその贈与の結末を見届けることはできません。ある財産を遺言で誰かに贈与すると書いたとしても、贈与を受ける側がそれを受け取ってくれるのか、遺言書どおりに手続が行われるのかも確実とは言えません。

そもそも、遺言が無効になってしまったり、法定相続人に遺留分などを主張され、ご自分の意思どおりに贈与できない場合も考えられます。この点、生前贈与であれば、ご自分の意思どおりに行い、しかもその結末を見届けることができます。

生前贈与のデメリット

1.贈与者の将来に影響を与える可能性

暦年贈与などを用いて多くの財産をご家族に贈与することにより、相続税の課税対象としての財産を減らすことができる一方、その財産はもはや自分のものではなくなってしまうのですから、老後の生活資金など、自分自身の将来の生活に影響を与えてしまう可能性もあります。

人生100年ともいわれる時代ですから、自分の老後の生活資金などの見通しが立っていないと、大きな額の贈与にはリスクが伴います。

2.相続開始前の贈与が相続税の課税対象となることもある

贈与者が死亡する3年以内に行われた贈与については、法的には贈与が終わって受贈者の財産となっていても、相続税の課税の上では死亡した贈与者の財産として計上され、相続税の対象となります(生前贈与加算)。

なお、この規定は令和6年1月1日以降に行われた贈与については、3年以内から「7年以内」に延長されることになります。

3.初めからまとまった贈与をしたものとみなされ課税されるリスク

暦年贈与の方法で財産を贈与する場合、年間110万円までは贈与税は課税されません。

しかし、たとえばある年に、今後10年間、毎年続けて100万円ずつ計1,000万円を贈与する、と決めたとしたらどうでしょう。

た110万円の非課税枠の中での贈与ではありますが、実質的には1,000万円贈与する約束をしていることと変わりはありません。

そのため、このような贈与が行われた場合、その年に1,000万円の贈与が行われたものとして贈与税が課税されるリスクがあります。